カテゴリー: 熱処理
発行済み 22 10月 2020

熱処理とは、生産された部品の素材を特定のニーズと要件に合わせてカスタマイズするための、積層造形における基本的な後処理工程です。 成功への道は、材料と熱処理の適切な組み合わせを見つけることです。

積層造形(AM)により、従来の手法では不可能だった複雑な金属設計を作り出すことができます。 ただし後処理をしないと、製造した部品は単にデザインが見事なだけで、実際の用途で使うには脆弱すぎるか多孔質すぎるでしょう。

後処理には、部品除去から表面処理までのすべてが含まれる一方で、後処理工程の中で最も重要なのは熱処理です。

「スチール、鉄、その他多くの元素は多形材質であり、 さまざまな温度と圧力領域でさまざまな結晶位相を示します」とドイツのGKN Sinter Metalsのモデリング、シミュレーション、ファティーグマネージャー、Markus Schneider氏は言います。 「その結果、化学的、熱的、電気的、磁気的、または機械的なそれらの材料特性はさまざまに異なります。というのは、これらの材料特性は、対応する微細構造に起因するからです。 熱処理は、これらの材料特性を調整する上で不可欠な方法です」

素晴らしい、持続可能なアイディア

「事実、熱処理は、1つの合金だけを使って特殊なニーズと要件に合わせて改造することがほぼ可能なくらい強力なツールです」と彼は言います。

「熱処理は見事なアイディアであり、より持続可能な手法でもあります。リサイクルプロセスが非常に簡単になるのですから」とSchneider氏は言います、 「ただし、熱処理だけでは、材料特性の範囲全体をカバーすることはできません。 特別なマクロおよびマイクロ合金化元素と手法がまだ必要とされているのは確かです。 材料と熱処理の適切な組み合わせが不可欠です」

熱処理に関するもう1つの強力な論拠は、局所性質の工学原理です。 「経済的な観点と環境への配慮から、私達はよりインテリジェントな部品設計を推し進めています」」と語ります。. 多くの場合、バルク材料の特性には表面材料の特性ほどの重要性はありません。というのは、表面は材料には、薬品侵害、熱破壊、あるいは機械的破壊から表面を保護する役割があるからです。 コーティング、スパッタリング、メッキ処理、熱処理などさまざまな後処理の背景にはこの知見があります」

応力除去

AMで後工程の熱処理を行う一般的な理由の1つは、残留応力の除去です。 残留応力は、部品が積層造形されるときの金属の加熱と冷却によって生じます。 これらの内部応力は、部品をビルドプレートから出す前に除去する必要があります。そうしないと、部品が歪んだりひびが入ったりする可能性があります。平らで薄い構造体をプリントする必要がある場合、これは実に画期的な方法になります」と Schneider氏は言います。

他の熱処理工程は、特定の部品に最終的な特性を加えることを目的としています。 熱処理オプションの範囲は、機械加工、鋳造、スタンピング、または鍛造などの競合技術の範囲と同じくらいですが、若干狭まります。利用可能なAM材の数は他のプロセスと比べて少ないからです。

「しかし一般に、各種熱処理を使用しない理由はないと思います」とSchneider氏は言います。 「いくつかの手法は、他の産業の場合ほど重視されることはありません。 たとえば、高周波焼入れは、リング、パイプ、歯車などの規則的な形状の対称性部品に最適です。 制限となる要因はインダクタ(コイル)の形状で、部品の形状と運動学に応じて調整する必要があります。 複雑な形状のAM部品が課題になります。 経済的にも大きな難点があります。自動化への取り組みが重要なため、高周波焼入れは大型ロットに最適です」

AM手法は熱処理の選択肢にどう結び付くのでしょうか?

「熱処理の大半は、プリント技術ではなく、化学組成に関連しています」とSchneider氏は言います。 「ただし、粉末床溶融結合や指向性エネルギー堆積などのワンステップのAM手法については、導入熱と熱分配の観点から見た場合、これらを1つにまとめることができます。 高温で不均一な熱がある場合(温度勾配、急速な加熱または冷却)は、軟化焼鈍と在留応力除去処理が必要になることがあります。 バインダージェッティングなどの2ステップのAM手法の場合、焼結は、プリント後に緑の部分を強固にするための製造工程の一部です。

工程の選択

熱処理工程の選択は通常、材料の化学組成に関連しているので、溶接構造物の熱処理手順の知識を多用できると、Schneider氏は言います。

ただし、一部の部品は、予想される負荷、要件、用途に応じて、特殊なタイプの熱処理が必要になります。 たとえば、スチールギアは表面焼き入れを行い、アルミニウムシャーシ部品は熟成させます。

「最もうまいやり方は、テストすることです」とSchneider氏は言います。 「疲労試験クーポン、あるいは他の種類のテストクーポンを準備し、熱処理をしながら、または熱処理なしでS-Nラインを作ります。 腐食耐性(ステンレス鋼)、熱伝導率(銅)、強度(アルミニウム)、クリープ速度(ニッケル基材とチタン)などを熱処理あり/なしの両方でテストします。 平均値と対応する標準偏差を比較してください」

硬度以外に考慮すべき点

よくある誤りは、MA後工程の熱処理で最も重要な要素は硬度だと思われていることだと、Schneider氏は言います。

「残念ながら、すべてを硬度に関連付けることはいまだによく行われています。 熱処理は、製品の信頼性、予測可能性、価値を高めるために行うものです。 信頼性の高い製品を実現するには、ノッチ、静的応力と周期的応力、残留応力、加工硬化、内部欠陥と粗さ、熱処理反応と密度依存性、材料と製造のばらつき、化学組成の影響に対する材料の感度を知る必要があります」