「ヒータの効率を上げるためにメーカーができることはたくさんありますが、それが必ずしも炉のエネルギー節約につながるとは限りません」と、Kanthalの技術サポートマネージャー、Dean McCabeは言います。 「私達は、発熱体の効率を上げるために、ラボと現場の両方で数多くのテストを実施し、私達の経験では、エネルギー節約レベルは用途ごとに大きく異なります」
熱伝達と出力比
ヒーターについての重要な考慮点は、発熱体のホットゾーン(炉内にある部分)で散逸される出力とコールドエンド(炉の壁を通る部分)で散逸される出力の比率です。 発熱体によっては、この比率が60:1の高さに達することがあります。 ただし、他の発熱体ではそれより低くなる可能性があり、発熱体のコールドエンド部分で散逸される発熱体の出力の割合が高くなります。
「ヒーターのエネルギー効率をさらに高めるには、出力比こそ調べて変える必要がある要因です」とMcCabeは言います。 「炉のオペレーターとして、エネルギー効率の高い発熱体を検討することは良い出発点であり、エネルギーの節約になるかもしれません。 しかし、注目すべき点がそれだけではないことを覚えておくことが重要です」
エネルギー消費量に影響するその他の要因
その他の重要な考慮点には、炉で使用される断熱材の品質と基準があります。 劣化していたり修理が必要な状態の場合は、逃げる熱量によってエネルギー消費量が上がる可能性があります。 炉の周囲環境も重要な要因です。 近くのドアや窓が開いていると、対流熱伝達に影響が及び、炉のエネルギー消費量に大きな影響が及ぶ可能性があります。
「この現象は現場で見たことがあります」とMcCabeは言います。 「非常に大型な熱処理炉を使用している自動車業界のお客様は、エネルギー需要が大きく変動していることに気付きました。 調査の結果、この需要の増加は、トラックヤードのドアの開閉と一致することが判明しました。 ドアの開閉が原因で工場内の気流に大きな変化が生じて、炉からの対流熱伝達が増えました。 このように、炉は周囲の環境にとても敏感なのです」
エネルギー効率の高い発熱体が必ずしもエネルギー節約にならないかもしれないもう1つの理由は、場合によっては発熱体のコールドエンドで散逸されるエネルギーが炉の全体的なエネルギーバランスに影響するこことがあるためです。 コールドエンドの出力が低減することで、ホットゾーンはより多くの熱を供給する必要があるため、実質的なエネルギー節約はありません。
「コールドエンドで散逸される出力のすべてが無駄になるわけではありません」とDean McCabeは言います。 「そのエネルギーの一部は炉を加熱し、炉を設定温度に保ちます」
画一的なソリューションはない
Kanthalの経験では、Globar ® SRヒーターの設置後、多数の炉で大幅なエネルギー節約が見られました。 一部のお客様からは、約15%の節約が報告されています。 この数値は、より抵抗の少ないコールドエンドを設計して、発熱体の全体的な出力比を改善することで達成しています。 ただし、すべての炉で同じような節約が見られるとは限りません。 通常、Globar®の恩恵を最も多く得られるのは、複数の炉を使用する大規模操業、高出力が使用する用途、または長いコールドエンドを備えた発熱体を使用する炉のお客様です。
「特定の発熱体によって、決まった量のエネルギーが節約されるとは断言することはできません。なぜなら、当社の経験では、特定の動作条件を満たさないと節約には至らないからです」とMcCabeは言います。 「当社はエネルギー効率の高い発熱体を製造できますが、断熱や環境など他の要因を考慮しなければ、効果がない可能性があります。 炉を運転する場合、確かにエネルギー効率の高い発熱体を検討する必要がありますが、それは炉のジグソーパズルの一部にすぎないことを覚えておく必要があります」